残存する紅白

ジャンルとしては得意なほうですが、長々となってしまいました。

その1 音声

初期の紅白、特に第1回〜4回については、本当のところは詳しいことはあまりよく判っていません。資料も乏しく、曲順はおろか出場者さえもはっきりしていないのです。
しかし第5回(1954[昭和29]年)からは出場者・曲・曲順もはっきりと判っています。
何故ならば、音声が現存しているからです。
NHKが後世のためにと残してくれたんですね。よかった、よかった。


いやいや、全然よくありません。だってNHKは残してないんですから。


じゃあ誰が残したのか、それはNHKの関係者でもなく、出場者でもなく、名古屋の貿易商でした。
この方、1954年11月にラジオ付のオープンリールテープレコーダをアメリカで購入、54年(第5回)から74年まで録音を続けました。
このテープが99年に発見、NHKに寄贈されました。
というわけで、音声に関しては5回以降はすべて現存しています。

その2 映像

次にテレビの映像に関してですが、1962年第13回のメイキングフィルムがあるようですが、番組として現存する最古のものは1963(昭和38)年の第14回です。これはモノクロのキネコ*1で残っており、横浜の放送ライブラリーに行くと観られますよ。
ちなみにこの回の視聴率は81.4%(関東地区)。紅白史上最高であるうえ、日本のテレビ史上でも最高の記録です。もうこんな数字は出ないでしょう。


話がそれましたが、14回の次に残っているのは16回(1965年)です。15回は初のカラー放送だったのですが、残念ながら映像は現存していません(音声は前述のテープがあります)。
で、その16回はモノクロキネコ(BigBearは未見、以下同)の他、放送用のカラーVTRで残されています。
このカラービデオ、一部欠落していたり、劣化が激しく観ると色がズレていたりするのですが、この時代の番組がカラービデオで残っているというのはそれだけで貴重なのです*2NHKアーカイブスの公開ライブラリーでカラー版を観ることができます。また、この年登場したばかりのモノクロの家庭用VTRでも残っているらしい(未見)です。


この後、66年(17回)から70年(21回)までモノクロ家庭用VTRで残されています(というか21回以外はそれしかありません。また中には素材が複数存在する年もあるらしいです)。鮮明な映像だったりボヤケていたりと、年・素材によって画質はさまざまです。
これらの家庭用ビデオの中には、当時司会をしていた故宮田輝アナの家で録画していたものもあります。
70年の21回に関しては、カラーキネコも存在します。一説によれば16ミリフィルムに焼いて海外の日本人の住む所(どこか分かりませんが)へ送り、上映会を開いていたそうです。たびたび上映されたせいか、フィルムは傷だらけ。おまけに一部映像が欠落しているそうです。


71年の第22回は、家庭用カラーVTRのみで残っています。Uマチックか統一I型カラーか分かりませんが、画質はあまりよくありません。


72年の第23回以降、ようやくNHKで放送用VTRによって残されるようになりました。


NHKアーカイブスほか、全国のNHKのうち41箇所に設けられた「公開ライブラリー」で、
第6,7回(ラジオ)、第16回、17回、19回、20回、22回、23回、25回、27回〜31回、33回〜36回、39回を視聴することができます。
http://www.nhk.or.jp/nhk-archives/


(12/09追記)ライブラリーの端末などでは第16回は「家庭用ビデオテープなどで録画したものを提供いただき…」とありますが、これは明らかな誤りです。65年当時、カラーの家庭用VTRはありません。

*1:ビデオ映像をフィルムに記録する方式。ブラウン管の前に特殊な16ミリカメラを置き、コマ数を変換しながら録画する。その逆がテレシネ

*2:同時期の放送用カラーV映像というと、東京オリンピック開会式[NHK]、ビートルズ武道館公演[NTV]、シャボン玉ホリデー(のオープニングだけ)[TBS]など。