一般家庭に残存しうる映像財産

この観察日記ではたびたび古いテレビ番組・古いビデオの話が出てきますが、今回は「家庭」に絞ってお話したいと思います。

以前も書きました(っけ?)が、世界初の家庭用VTR「CV-2000」がソニーから発売されたのが1965(昭和40)年のことです。これをきっかけに各メーカーからオープンリールの家庭用VTRが売り出され、やがて「統一I型」という規格も生まれました。
その後、「Uマチック」をはじめ、いろんなメーカーからいろんな規格のVTRが発売されました。75年にはソニーから「ベータマックス」、76年にビクター他から「VHS」が登場し、永木にわたる戦争が勃発しました。まぁ、これはご存知のとおりVHSが完全勝利したのですが。


して、家庭用VTRの使い道としてもっとも一般的なのは「テレビ番組を録画すること」でしょう。もちろん前述のVTRを使って各家庭(というにはちと語弊があるのですがここでは気にせず)でテレビを録画して、普段見られない時間の番組を後で楽しんだりしたのでした。


で、ここからが本題になるのですが、実は「放送局には現存せず家庭用VTRの映像のみ存在する」といったもの、言い換えれば「家庭用VTRの映像が放送局に番組映像として保存されている」というものが数多く存在します。代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

てなもんや三度笠(朝日放送)

一番の好例でしょう。この番組は局として残しているものはキネコ1本(だと思うんですけど)しかありません。しかし、番組プロデューサーの澤田隆治氏が家で録画していたビデオが相当数(30本以上はあるでしょうか。再生不能なテープもあると聞きましたが)現存し、VHS・DVDでソフト化もされています。

NHK紅白歌合戦

ついこの間書いたばかりですね。宮田輝アナなどが録画していたビデオが数本あります。

少年ドラマシリーズ(NHK)

これも結構な数があります。
72年の「タイム・トラベラー」から始まった少年ドラマシリーズ*1、全部で99作品が存在しますが、局で残っている映像はフィルム制作の数本しかありません。
しかし、第1作の「タイム・トラベラー」をはじめ、「なぞの転校生」「幕末未来人」「七瀬ふたたび」「その町を消せ!」など数多くが家庭用VTRによって現存し、一部はソフト化されています。
特に「タイム・トラベラー」は長い間幻の作品とされていましたが、99年に最終回のビデオが発見・修復され、27年ぶりに蘇ったのでした*2。いい話ですなぁ。


その他、朝の連続テレビ小説大河ドラマも何作品かは家庭用VTRからの映像ですし、民放ではTBSの「ぎんざNOW」、フジテレビの「ママとあそぼう!ピンポンパン」の初期のものなどいろいろ残ってます。テレビ朝日徹子の部屋」も第1回をはじめ、何回か残っています。「新婚さんいらっしゃい」も第1回が家庭用VTRで残ってます。


…どうもNHKに偏ってるような気もしますが、NHKアーカイブスがあったりして結構家庭用V映像が出てくるのですが、民放ではほとんど眠ったままのようです。もちろんもっとあると思うのですが。


しかし、放送局どころかまだ一般家庭で眠っている貴重な番組が、日本中探せばどこかにあると思うのです。各局が大々的なキャンペーンを組めば、そういう番組はまだまだ発掘できるはずです。
特に旧式のビデオだと、すでに機器もないor使えない、かさむのでテープもすべて捨ててしまった、などという残念な事例もあることでしょう。そんなことをさせないためにも、そういう映像を探していることをもっと一般市民に対してアピールすべきではないかと思うのです。

*1:実際には「タイム・トラベラー」では「少年ドラマ」という名前は一切出てこない

*2:http://www.h2.dion.ne.jp/~tinei/nhk.html